【仁義なき戦い】 丸の内OL・大手町OL・八重洲OLの自意識戦闘録

現代の三国志!丸の内・大手町・八重洲

東京駅。赤色のレンガで装飾された駅舎は日本のみならず世界の観光客を魅了しており、毎日記念写真を撮影している高校生や家族連れを目撃する。なにより東京駅は日本のビジネスの震源地ともいえるエリアにある駅なので、周辺では多種多様なビジネスパーソンが闊歩している。

「あのスーツさぞかし高いんだろうな~。外資金融かな...?」

「体育会系で無邪気な雰囲気なイケメンだな~。あ!三菱商事の社員証だ!」

「黒塗りのハイカーから降りてきたオジサン、結構いけるわ~(笑)」

というように人間観察に飽きることないのが、ここ東京駅周辺である。そんな東京駅にも隠れたヒエラルキーがあり、そこには熾烈なマウンティングが存在する。まずは東京駅と皇居の中間地である丸の内。Wikipediaによると

皇 居外苑と東京駅に挟まれた地区で、東京駅を中心に、北に隣接する大手町と共にオフィス街として発展している。丸の内ビルディング新丸の内ビルディング三菱東京UFJ銀行本店ビル、郵船ビルディングなどの大手銀行や大企業のビルが建ち並び、日本の金融・経済の中心地の一つとなっている。歴史的な経緯から 三菱グループの本社が集中し、「三菱村」とも呼ばれる。

丸の内 - Wikipedia

なんという重厚感!!!「歴史的な経緯」という言葉から感じられる重厚さ、そして同時に先進的な雰囲気も持ちあわせる絶対的存在。

「どちらにお勤めなんですか?...丸の内なんですね!(ハアハア濡れてきた)」

と いう女性も少なくないはず。「勤務地は清澄白河です!」とか「平日は亀有にいます!」とか言われるよりも100倍説得力がある。「大企業勤務なんて今時な んの価値もない」という意見もあるかもしれないが、なんだかんだ大企業勤務の彼氏がいたら自慢になるよね?JPモルガンやシティのような外資金融のオフィ スもたくさんあるし、TOKIAのMUCHO MODERN MEXICANOあたりで恋を芽生えさせたいよね?

そんな丸の内に隣接するのが大手町。

中 央区(日本橋本石町八重洲)との区境にあたる。町名としての大手町は、地下鉄各線の大手町駅を中心とする地域である。日本経済の中心地として、南に隣接 する丸の内と共に政府系金融機関・大手銀行・商社・マスコミの本社などが集積する。最近は建物の老朽化などが見られ、再開発が盛んである。以前、この地域 は皇居前(こうきょまえ)ということもあり、建築基準によって建造物の階数に厳しい制限があった。しかし、現在は緩和され、東京サンケイビルを始めとした 超高層ビルが建つようになり、丸の内と共に日本屈指のオフィス街を形成している。

大手町 (千代田区) - Wikipedia

金融機関のメッカともいえるのがここ大手町。日本政策投資銀行メガバンクモルガンスタンレー野村證券のオフィスがあるのが大手町。Wikipediaの記述にもあるように再開発が進んでおり、星のや東京なんかができるのもここ大手町。

「大手町勤務です!(銀縁眼鏡キラッ!!!!)」

「(ヒャア!!!高学歴ねん!!!濡れてきたわ...)」

なんていう知性すら感じさせる。丸の内と比較してやや娯楽施設が少ないような印象があるが、そんなところが”真面目な俺達大手町”を演出してくれる。そしてもはや東京駅と皇居の中間地に位置することなく、果てしない太平洋と東京駅の中間にあるのが八重洲

東 京駅の東側に位置し、東京駅では西側の出口(皇居方面)を「丸の内口」、東側の出口(日本橋方面)を「八重洲口」と称することから、駅西側一帯を「丸の 内」、東側一帯を「八重洲」と通称している。ただし、東京駅の駅舎、プラットフォーム等の施設はすべて千代田区丸の内一丁目に位置し、千代田区丸の内と中 央区八重洲の境界は、東京駅八重洲口駅前よりもやや東にある。

八重洲 - Wikipedia

うん?企業の名前がありませんね。金融機関とか商社とかキラーワードが見当たらない。そういえば東京駅のデザインも八重洲側になるとレンガを感じさせない無機質な雰囲気だし、そういえば怪しい勧誘が行われている珈琲屋は八重洲にある気がする...

八重洲勤務です... (ごめんなさい...)」

「そうなんですね... (大丸で海鮮丼くらい買うてこいやボケナス!!!)」

という残念感もここ八重洲の特徴。ただし地下街はかなり充実しており、いわゆる東京駅の地下街グルメは八重洲方面に集まっている印象。ノースタワーやサウスタワーにはBNPパリバリクルートのような大企業のオフィスがあるはずだが...

そ んな東京駅三国志こと丸の内・大手町・八重洲。もちろん日本橋とか日比谷あたりもこの群雄割拠に含められないこともないが、魏蜀呉の傍目で独特なポジショ ンを築いていく小国感は否定できない。なにはともあれこの三国志、それぞれ強烈な自意識を持ちつつ仁義なき戦いへと突入している。

①丸の内OL「はぁ???あたしたちが女王よ???笑わせないでっっ!!!」

イルミネーションで輝やいている並木を横目に石畳を歩いていく。エルメスのショーウィンドウで最先端の流行を察知しつつ、高層階で最高峰のグルメを堪能する。

「たまに道路にハイヒールが食いこむけど、あたしはやめないの。ルブタンの赤で後方攻撃も忘れないわ。ちなみに仕事は金融機関のVPで年収は○○○○万円よ。通勤は神田方面から毎朝毎夜タクシーよ。喋る運転手は嫌いよ。」

OLと呼んでいいのだろうか... 髪にゆるふわなパーマをかけて、ワンピースにカーディガンを羽織るようなファッション。

「総合職の皆さんに頼られるようになたいです!(あたし出身は聖心よ?パパは開業医でママは専業主婦だけどNPOの理事してるのよ?サラリーマンとの結婚は金銭面で不安だけど、パパにお願いすればいいのよ?ガタイのいいイケメンと結婚するのよ?)」

大手町OLや八重洲OLをライバルとして認識することもなく、絶対王者としての威厳と余裕を振りまいている。ランチは1,000円がミニマムで、牛丼でやりくりする哀愁リーマンたちに生きるとはなにかという問題提起をしている。

②大手町OL「あたしたちはねえ、本気なのよ。羨ましくないわクソ石畳なんて!!」

レストランも少なければファッションショップも少ない。どことなく照明も少なければ、ふとビルのガラスに映りこむ自分自身を見かけては心で3回唱える。

「あたしは素敵、あたしは素敵、すてーーーきういーーー!!!!!!!」

本 気なのが大手町OL。仕事に全力、恋は無視。なんで周囲の金融機関の男前は丸の内でばかり御飯をするの?麻布十番や六本木方面まで遠出する時間あるなら ば、大手町で3倍の出会いがあるぞ?周囲にナイススポットもないから徒歩がやや速めだけど、仕事の処理能力も凄まじいものがあるのよ?

「丸の内さん、御愁傷さま。いつまで女子でいるつもりなの?」

「石畳?機能的でないわね。景観?窓に映りこむアタシが美観の象徴よ?」

「(く、くやしいわ... なんなの?イルミネーションやれよ!!!!!)」

嫉妬とプライドの狭間で揺れる大手町OLは、アマン東京のプールで泳ぎまくることで精神を安定へと導いていく。オアゾ丸善で自己研鑽に励んでいく。

八重洲OL「...ごめんちゃい♪アタシは雑居ビルで生きていくわ♪」

レンガのデザインなんてどこにもない八重洲。駅前のバスターミナルでウダウダしている田舎娘たちを傍目に「わたしは東京にいるのよね?」と不安になる。それでも大丸の総菜屋はなかなか食えるラインナップだし、東京駅周辺勤務という称号は嘘ではない。

「東京駅周辺で働いています!」

「へー、丸の内?」

「い え、八重洲です(せめて大手町で勤務をしたかった。それか日本橋あたりで三国志とは別世界で平和に生活したかった。日本で最高層のオフィスビルが建つらし いけど、それがなんなの?地下街を歩かせたら一番。迷路のような地下街をスイスイと歩いていくアタシたちは忍者、忍者なのよ?気をつけなさい?)」

自意識の戦闘に巻きこまれる僕

平和な日本。その政治経済の震源地である東京駅周辺では今日も自意識の戦闘が止まらない。全然関係ないけど東京駅周辺の地下街って完全に迷路だよね... 雨に濡れないのはいいけれども、少しでも「あれ?どの道行けばいいのかな?」という状態になると周囲からの

「あーら、おのぼりさん?ぶっつぶすわよ?」

「修学旅行いつまで続けてるの?人返りの令よ!!」

「あらあら、錦糸町あたりで勤務する底辺?おほほほ!!」

みたいな視線を浴びているような気持ちになる。いや、本当はそんなこと全然ないんだけど、自意識戦闘の嵐であるここ東京。油断大敵なのである。